犬の腎不全とは?腎不全と診断された場合の余命は?
2022年11月16日
腎不全は犬の死因として非常に多く、特に高齢犬に発症しやすい疾患です。腎臓は生命維持に欠かせない臓器ですが機能が低下しても症状が現れにくく、飼い主が愛犬の異変に気がつかない間に早く病気が進行してしまうのです。
今回の記事では犬の腎不全について基本的な知識と、診断後の余命について詳しく説明していきます。
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監修:わんにゃん保健室 獣医師 江本 宏平
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目次
腎臓の役割とは?
腎臓は尿を作るための臓器であり、血圧の調整・赤血球を作る・骨を強くする働きを持っています。生命を維持するための重要な臓器でありながら機能に問題が生じても症状が現れにくく、肝臓と並んで「沈黙の臓器」と呼ばれているのです。
腎臓病にはさまざまな種類がありますが、中でも腎臓の機能の75%以上が失われた状態が腎不全です。
腎不全の種類と症状
犬の腎不全には比較的治療が行いやすい急性腎不全と治療が困難な慢性腎不全の2種類が存在します。ここではそれぞれの疾患について詳しく説明しましょう。
犬の急性腎不全
犬の急性腎不全は尿路結石・前立腺肥大・膀胱炎など泌尿器に関する病気が原因で発症し、腎臓機能が急激に低下します。救急管理が必要な病気で命に関わる可能性も考えられるものの、早期発見と適切な治療によって助かる可能性が高いです。
急性腎不全の症状には次のようなものがあります。
・嘔吐する
・意識低下
・呼吸が荒くなる
・突然ぐったりする
・排尿が止まる・減る
など
非常に進行が早いという特徴があり、数時間で症状が悪化していきます。急性腎不全が疑われる場合にはすぐに動物病院を受診してください。
犬の慢性腎不全
慢性腎不全は10歳以上の高齢犬に発症しやすく、腎臓内で血液をろ過する器官が加齢などの理由で破壊されていくことで起こります。症状が非常にゆっくり進行するために分かりにくく、慢性腎不全と診断された時点でほとんどの腎臓機能は失われてしまっているのです。
慢性腎不全の症状には次のようなものがあります。
・体重が減る
・食欲が減る
・水を飲む量が増える
・尿の量・回数が増える
・尿が薄い色になる
・活動量が減って元気がなくなる
・便秘になりやすくなる
・口臭が強くなる・変わる
・皮毛にツヤがなくなる
・嘔吐しやすくなる
など
どの症状も緊急性が低く分かりにくいため、飼い主が愛犬の慢性腎不全に気がつくことは非常に困難だと言えるでしょう。末期になると老廃物が排出できずに尿毒症を発症し、痙攣など顕著な症状が現れるようになります。残念ながら末期の慢性腎不全の犬の余命は非常に短いです。
犬の腎不全の原因とは?
犬の腎不全の原因は急性か慢性化によって変わります。
犬の急性腎不全の原因
犬の急性腎不全は循環器系の異常による腎臓への血液供給のトラブル・腎毒性のある物の摂取や感染・尿道閉塞のせいで尿が排出できなくなっている・事故によって膀胱に問題が発生しているなどが考えられます。
犬の慢性腎不全の原因
犬の慢性腎不全の原因は慢性的に腎臓が炎症することで起こります。全ての高齢犬が発症しやすい疾患で犬種による偏りはありません。
犬の腎不全の治療方法とは?
急性腎不全の治療には水分や電解質を投与する点滴治療がありますが、慢性腎不全と診断された場合は、病気を治すという目的ではなく体調を安定させる・苦しさを緩和させるための治療が行われます。一部の施設では人工透析や腹膜透析などの治療も行っているものの、治療費の問題から治療を希望することが困難な場合も珍しくありません。特に末期の慢性腎不全になると、辛さを緩和させる治療の効果も得られなくなってしまいます。
犬の腎不全の余命とは?
残念ながら慢性腎不全が完治することはありません。慢性腎不全のステージは尿の色が薄くなる以外の症状がほとんどないステージ1から尿毒症が進行して臓器全般・脳神経系に深刻な問題が生じるステージ4までに分類されています。
ステージ4の犬には苦しみを緩和する治療の効果がほとんど見られなくなるため、ステージ4は安楽死という選択も時として考えられる時期でもあります。一般的には、腎臓の残存機能が30%前後であるステージ2からの余命は1〜2年だと考えられています。もちろんこの余命や治療によって長くすることも不可能ではありません。ただし、慢性腎不全末期の犬の余命は数日〜1ヶ月程度です。
まとめ:犬の腎不全とは?腎不全と診断された場合の余命は?
いかがでしたか?今回の内容としては、
・腎不全には急性腎不全と慢性腎不全の2つの種類がある
・急性腎不全は急速に症状が悪化するが慢性腎不全は症状が分かりにくい
・慢性腎不全は完全に治療することができない
・慢性腎不全にはステージ1〜4があり、ステージ4になると症状の緩和が難しい
以上の点が重要なポイントでした。腎不全は飼い主が気付くことが難しい疾患であり、特に高齢犬は慢性腎不全にかかりやすいです。普段から犬の排尿回数・様子を確認して少しでも早く腎不全の兆候に気がつけるようにしましょう。
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